3歳秋をすぎて1勝できていない馬は、未勝利馬に分類され、格上挑戦か、地方競馬への転向、引退など選択する必要があります。
2015年以降、未勝利馬が格上挑戦する数が増えてきていますが、出走の優先順位の低さや出走手当の減額など、厳しい状況が続きます。
当記事では、未勝利馬が格上挑戦できる理由から、格上挑戦後の困難まで解説していきます。
この記事を読んで分かること
- 未勝利馬が1勝クラスに格上挑戦できる理由
- 格上挑戦をする未勝利馬の特徴
- 未勝利馬が格上挑戦するときのデメリット
- 未勝利馬の格上挑戦以外の選択肢
なぜ未勝利馬が1勝クラスに格上挑戦できるのか
3歳秋を終えた未勝利馬は格上挑戦するか選択する必要がある
日本の競馬では、馬の年齢と収得賞金額によるクラス分けが行われており、どの馬も新馬(メイクデビュー)によってデビューします。
しかし、毎年7000頭ものサラブレッドが生まれる中で、勝ちのこれるのは一握りの馬だけです。
3歳9ヶ月1週を迎えても1着になったことがない馬は、未勝利馬と呼ばれ、そのまま中央競馬に残って1勝クラスに格上挑戦するか、地方競馬に移籍するの選択をする必要があります。
2024年から未勝利馬の出走制限が緩和された
これまで未勝利馬が格上挑戦するとき、中山競馬、東京競馬、京都競馬、阪神競馬の平地競走に出走する制限が設けられていました。
ただ、2024年から競走場の円滑な出走を目的に、出走制限が緩和されたため、今後未勝利馬でも格上挑戦するケースが増えることが予想されます。
競走馬のより円滑な出走を図る観点から、3歳および4歳以上の未出走馬・未勝利馬に対する中山競馬、東京競馬、京都競馬および阪神競馬の平地競走における出走制限を解除します。
(参照)JRAニュース 2024年度競馬番組等
実際、2015年以降、未勝利馬が格上挑戦するケースが年々増加傾向にあり、加えて未勝利馬が格上挑戦したレースで勝利すること割合も増えてきています。
未勝利馬が格上挑戦できるのはいつまでか?
しかし、3歳秋まで1勝もすることができなかった馬が、格上挑戦して勝てることは滅多にありません。
馬主の意向により、未勝利馬でも格上挑戦するケースが増えてきてはいますが、結果が残せなければ引退せざるを得ない状況となります。
ソダシのように8歳まで未勝利でも出走する馬もいますが、金銭的な面から格上挑戦を諦めざるを得ないケースがほとんどでしょう。
格上挑戦する未勝利馬の特徴とは
デビューが遅れてしまい未勝利馬となった馬
3歳秋まで未勝利でも格上挑戦する馬の特徴として、怪我や成長の度合いによりデビューが遅れてしまい未勝利となった場合が挙げられます。
馬によっては、発育が遅く、デビュー自体が遅くなるケースも存在します。
デビューが遅れてしまい、未勝利馬となってしまっても、出走したレースである程度の着順に入っていれば格上挑戦することがあります。
血統が素晴らしく素質があると判断された馬
また、未勝利馬でも血統が良く、今後成長する可能性があると判断された馬は格上挑戦を選ぶことが多いです。
競馬は、別名ブラッドスポーツと言われており、血統がレースの結果に大きく影響します。
そのため、3歳秋まで勝てなくても、血統の良さから格上挑戦をすることもあります。
未勝利馬が格上挑戦するときのデメリット
出走の優先順位が低い
未勝利馬が格上挑戦したとしても、出走の優先順位が低く、なかなか出走できないのがデメリットです。
3歳以上1勝クラスの出走の優先順位を見ると、未勝利馬の優先順位がかなり低いことが分かります。
- 本会の競走馬登録を受けた後,当該出馬投票の直前に出走した競走が成績対象期間に実施された中央競馬の平地競走であって,当該競走における着順が第 5 着以内の自ブロック所属馬(未勝利馬を除く。)
- 本会の競走馬登録を受けた時,すでに地方競馬または外国の競馬の競走に出走したことがある馬であって,当該登録後最初に出走する自ブロック所属馬
- 出走間隔の長い自ブロック所属馬(未勝利馬を除く。)
- 本会の競走馬登録を受けた後,当該出馬投票の直前に出走した競走が成績対象期間に実施された中央競馬の平地競走であって,当該競走における着順が第 5 着以内の他ブロック所属馬(未勝利馬を除く。)
- 本会の競走馬登録を受けた時,すでに地方競馬または外国の競馬の競走に出走したことがある馬であって,当該登録後最初に出走する他ブロック所属馬
- 出走間隔の長い他ブロック所属馬(未勝利馬を除く。)
- 未出走馬のうち自ブロック所属馬
- 未勝利馬のうち出走間隔の長い自ブロック所属馬
- 未出走馬のうち他ブロック所属馬
- 未勝利馬のうち出走間隔の長い他ブロック所属馬
参考 JRA 一般事項
また、1勝馬は1勝クラスのレースで5着以内に入れば、次のレースでの出走優先順が高くなりますが、未勝利馬は5着以内に入っても優先順位は高くなりません。
未勝利馬が格上挑戦したとしても、そもそも出走できないということも十分考えられます。
特別出走手当が少ない
中央競馬では、未勝利馬に対して特別出走手当を減額する措置が取られています。
3歳未勝利の編成終了後、平地競走に出走した未出走・未勝利馬は、年齢にかかわらず半額交付となります。
(参照)JRA 賞金のしくみ
中央競馬では、出走1回につき495,000円の特別出走手当がつきますが、未勝利馬が格上挑戦する場合は半額しか支給されません。
未勝利馬の格上挑戦には、出走の優先順位の低さだけではなく、賞金面でも厳しい措置がとられているのが現状です。
未勝利馬の格上挑戦以外の選択肢
地方競馬への移籍
地方競馬への移籍は、中央競馬で成績が振るわない未勝利馬にとって、再起のチャンスを提供します。
地方競馬では、レベルや競争の激しさが異なり、馬によってはより良い成績を収めることが可能です。
移籍を決定する際には、馬の適性や将来性を見極めることが重要となります。
また、移籍後の管理体制や環境の変化に馬が適応できるかも、成功の鍵を握ります。
障害競走への転向
障害競走への転向は、平地競走で目立った成績を挙げられなかった馬に新たな道を開く選択肢です。
障害競走は平地競走とは異なり、跳躍力やスタミナが求められるため、馬の能力によっては転向後に顕著な成果を上げることがあります。
転向を検討する際には、馬の体力や精神状態、適性を十分に評価することが必要です。成功するには、専門的なトレーニングと時間が必要となります。
引退
引退は、競走馬としての活動を終える選択肢であり、さまざまな理由で決定されます。
引退後の馬は、繁殖馬として第二のキャリアを歩むことがありますし、乗馬やセラピー馬として社会貢献の道を歩む場合もあります。
引退を決定する際には、馬の健康状態や将来性、さらには適切な引退後のケアを確保することが重要です。引退は終わりではなく、馬にとって新たなスタートを意味します。
未勝利馬が地方競馬に転向して中央競馬に戻るためには
中央競馬に戻るための条件とは
未勝利馬が地方競馬に転向し、中央競馬に復帰する道のりは年々厳しくなっています。
2004年までは5回以上出走するか、1勝以上で中央競馬に出戻りすることができましたが、2013年以降は3歳までに2勝以上、4歳以上で3勝以上が条件となっています。
中央競馬へ復帰して活躍した馬は
地方競馬に転向してもぱっとしないまま引退する馬がほとんどの中、地方競馬で結果を出し、さらに中央競馬でも結果を出し続けた馬もいます。
- マジンプロスパー
- シーキングザベスト
- アーバニティ
- サマーウインド
- アグネスラズベリ
未勝利馬は地方競馬に転向することは悪いイメージを持たれがちですが、地方競馬で成長し、中央競馬でも結果を出す馬も存在します。
未勝利馬で格上挑戦しないことも選択肢の1つであることが証明されています。
未勝利馬の引退後の選択肢とは
乗馬クラブで活躍する
未勝利馬が引退後に乗馬クラブで活躍する道を選ぶ場合、その馬は新たな役割を担います。
乗馬クラブでは、馬は乗馬教室の生徒や乗馬愛好家に乗られることで、人々とのふれあいを通じて再び社会に貢献します。
ここで重要なのは、引退競走馬が乗馬に適した性格や体力を持っているかどうかを適切に評価することです。
適性があれば、訓練を受けて乗馬用の馬として第二のキャリアを歩むことができます。
ホースセラピーで活躍する
ホースセラピーで活躍する道を選ぶ未勝利馬は、人々の心のケアに大きく貢献します。
馬はその温和な性格と独特の存在感で、心身のリハビリテーションや精神的なサポートを必要とする人々に対して療養の手助けをします。
ホースセラピーに適した馬は、特に人間との穏やかな関わりを好む性質を持つことが求められます。
適切なトレーニングとケアによって、これらの馬は多くの人々に癒しを提供することが可能です。
殺処分される
残念ながら、全ての未勝利馬が引退後に安全な避難所を見つけられるわけではありません。
一部の馬は、適切な引退後のケアが見つからない場合、殺処分される運命にあります。
これは競馬業界の暗部とも言える問題であり、社会全体でこれらの馬に対するより良い生涯計画を提供する必要があります。
未勝利馬が安定した未来を確保できるよう、引退後の受け入れ体制の整備や、再訓練プログラムの拡充が急務とされています。
未勝利馬が格上挑戦して勝利する条件とは
格上挑戦の初戦であること
未勝利馬が格上挑戦したレースで勝利する条件として、格上挑戦した初戦であることが挙げられます。
未勝利馬で1勝クラスのレースに出走できたとしても、今まで勝ててなかった馬が、そう簡単に勝てるほどあまくありません。
ただ、デビューが遅く、実力が発揮できていない馬が格上挑戦したレース初戦で勝利するケースは存在します。
格上挑戦の時期が9月から12月であること
また、未勝利馬が格上挑戦で勝つケースで、時期が9月から12月であることも重要となります。
先ほどの格上挑戦の初戦であることにかぶる部分はありますが、未勝利馬となってすぐのレースで勝利することがあります。
未勝利馬の中でも、未勝利戦でコースコンディションや騎手との相性に恵まれなかった場合もあり、1勝クラスでいきなり実力を発揮することがあります。
前走での成績が良いこと
未勝利馬だけでなく、全ての競走馬に言えることですが、前走での成績が良い未勝利馬は初戦の格上挑戦で勝つことがあります。
未勝利馬が出走している1勝クラスのレースがあった場合、候補から外すのではなく、前走の結果を見てみることをおすすめします。
前走の結果が良く、未勝利馬になってすぐの馬であれば、1着になる可能性を秘めています。
まとめ
未勝利馬が格上挑戦をして、クラスを上げていくことは、かなり厳しい道のりです。
しかし、格上挑戦をする馬たちは今後の成長を期待されている馬でもあります。
すでに結果を残している馬たちの中で、勝利することは難しいことでもありますが、絶対に無理なことではありません。
今後、3歳以上1勝クラスで未勝利馬が出走しているときは、前走の結果や血統などを見てみることをおすすめします。
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